
「未来を生きる力」を育てる必要があると、色々な所で耳にします。
未来を生きる子どもたちには、一体どんな力が必要になってくるのでしょうか。
AIの進化やデジタル化、社会の変化など、子どもたちを取り巻く環境は大きく変わっています。
これから先、どんな仕事が生まれるのか。
どのような社会になっていくのか。
今の時点ですべてを予測することはできません。
だからこそ、これからの教育では、今ある知識を覚えることだけではなく、変化する社会の中で、自分で考え、判断し、行動していくための力が重要になっています。
では、世界では「これからの教育」をどのように考えているのでしょうか。
そこで注目したいのが、OECDです。
OECDとは?教育についても議論している国際機関

OECDは、「経済協力開発機構(Organisation for Economic Co-operation and Development)」という国際機関です。
日本を含む各国の政府などが参加し、経済だけでなく、教育、社会、環境など幅広い分野について、データや分析をもとに国際的な議論を行っています。
OECDは、各国の教育についても調査や分析を行い、「これからの社会に、どのような教育が必要なのか」という議論を続けています。OECD自身も、データや分析、各国の経験を共有する「知識の拠点」として、教育を含むさまざまな政策分野を扱っていると説明しています。
つまり、OECDは学校や塾のような教育機関ではありません。
世界の国々がよりよい社会をつくっていくために、さまざまな課題について調査・分析し、政策について考えるための国際的な組織です。
そんなOECDが、これからの教育について進めてきたのが「Future of Education and Skills 2030」というプロジェクトです。このプロジェクトでは、これからの社会で子どもたちがよりよく生きていくために、どのような知識やスキル、態度、価値が必要なのかを、各国の研究者や教育関係者、学校、子どもたちなどとともに議論してきました。
その中で示されているのが、「OECDラーニング・コンパス2030」です。
「OECDラーニング・コンパス2030」とは?

「Learning Compass」は、日本語にすると「学びの羅針盤」です。
OECDは、これからの社会を生きる子どもたちにとって、決められた道をそのまま進むだけではなく、変化する状況の中で自分で方向を考え、よりよい未来に向かって進んでいくことが大切だと考えています。
そのための考え方をまとめた、未来志向の教育の枠組みが「OECDラーニング・コンパス2030」です。
ここで大切なのは、ラーニング・コンパスが「世界中の学校はこういう授業をしなさい」と決めるものではないということです。OECD自身も、これは各国の教育課程をそのまま決めるためのものではなく、これからの教育について考えるための「共通の言葉」や方向性を示す枠組みだと説明しています。
では、そこで示されている「これからの学び」とは、どのようなものなのでしょうか。
「未来を生きる力」は、知識だけではない

「未来を生きる力」と聞くと、
「英語ができること?」
「プログラミングができること?」
「AIを使えること?」
などを思い浮かべるかもしれません。
もちろん、こうした知識やスキルはこれからの社会でも重要です。
しかし、OECDが示しているのは、特定の技能だけではありません。
ラーニング・コンパス2030では、これからの学びに必要なものとして、
「知識・スキル・態度・価値」
を組み合わせた「コンピテンシー」という考え方が示されています。
つまり、「何を知っているか」だけではなく、
「知っていることをどう使うか」
「どのように考えるか」
「どう行動するか」
まで含めて、これから必要な力を考えているのです。
例えば、環境問題について知識があったとしても、それだけで問題を解決できるわけではありません。
「なぜこの問題が起きているのだろう?」
「どんな方法なら解決できるだろう?」
「自分には何ができるだろう?」
「ほかの人はどう考えているだろう?」
と考え、必要なことを調べ、周りの人と話し、実際に行動してみる。
そして、やってみた結果を振り返り、次の方法を考える。
このように、知識やスキルを実際の状況の中で使っていくことが重視されています。
OECDが示す「3つの力」

ラーニング・コンパス2030では、これからの社会で特に重要になるものとして、「変革的コンピテンシー(Transformative Competencies)」という3つの力が示されています。
少し難しい言葉ですが、簡単に言い換えると、「よりよい未来をつくっていくための力」と考えることができます。
1.新たな価値を創造する
一つ目は、「Creating new value」。
今までなかったものを発明する、という意味だけではありません。
「もっとよくするにはどうしたらいいだろう?」
「別の方法はないだろうか?」
「こんなこともできるかもしれない」
と考え、新しいアイデアや方法、価値を生み出していくことです。
例えば、
「教室をもっと過ごしやすくするにはどうしたらいい?」
という問いについて考えるとします。
周りを観察し、困っていることを見つけ、アイデアを出し、実際に試してみる。
その中で生まれた小さな工夫も、新しい価値をつくる経験の一つです。
OECDは、こうした力を、これからの社会をよりよくしていくための重要なコンピテンシーの一つとして位置づけています。
2.対立やジレンマを調整する
二つ目は、「Reconciling tensions and dilemmas」。
簡単に答えを出せない問題について、さまざまな立場や考えを見ながら、よりよい答えを探していく力です。
社会には、
「便利さ」と「環境への配慮」
「自分の意見」と「相手の意見」
「今のよさ」と「将来のよさ」
のように、どちらか一方だけを選べばよいとは限らない問題があります。
そんなとき、
「なぜ相手はそう考えているのだろう?」
「それぞれの考えには、どんなよさや課題があるのだろう?」
「どうすれば両方を大切にできるだろう?」
と考えてみる。
OECDは、こうした対立やジレンマを調整し、複雑な状況の中でよりよい選択肢を探していく力を重視しています。
3.責任をとる
三つ目は、「Taking responsibility」。
これは、自分で考えて選択したことについて、その結果にも目を向ける力です。
「先生に言われたからやった」
「みんながやっているからやった」
だけではなく、
「自分はどうしたいのか」
「なぜそう考えたのか」
「やってみた結果、どうだったのか」
「次はどうしたらいいだろう」
と、自分の行動を振り返る。
そして、次の行動につなげていく。
OECDは、こうした責任ある行動も、これからの社会をつくっていくための重要な力として示しています。
「自分で考える」は、一人で何でも決めることではない

OECDの考え方を見ていると、もう一つ重要な言葉が出てきます。
それが、「Student Agency(生徒エージェンシー)」です。
少し聞き慣れない言葉ですが、ラーニング・コンパス2030の中心的な考え方の一つです。
OECDは、子どもたちが「自分も自分の未来を形づくることができる」と考え、自分なりの目的を持って考え、行動することを重視しています。
ただし、これは「子どもに何でも自由に任せる」という意味ではありません。
子どもたちは、先生、友達、家族、地域など、周囲の人との関わりの中で学びます。
そのため、自分だけで考えて進むのではなく、人と関わりながら、自分の考えを持ち、選択し、行動していくことが大切です。
「自分で考える力」と「人と関わる力」は、切り離されたものではないのです。
「考える→やってみる→振り返る」が学びを深める

OECDのラーニング・コンパス2030では、「Anticipation-Action-Reflection(AAR)」という学びのサイクルも示されています。
日本語にすると、
「見通しを持つ」
「行動する」
「振り返る」
という流れです。
例えば、
「こうしたらうまくいくかもしれない」と考える。
実際にやってみる。
すると、思った通りにならないこともあります。
そのときに、
「なぜうまくいかなかったのだろう?」
「どこを変えたらいいだろう?」と振り返る。
そして、次の方法を考えてもう一度やってみる。
この繰り返しによって、経験が次の学びにつながっていきます。
ここで大切なのは、「失敗しないこと」ではありません。
実際にやってみたからこそ分かったことをもとに、次の行動を考えることです。
「未来を生きる力」は、小学生にも関係する

ここまで読むと、
「こうした力が必要になるのは、高校生や大学生になってからでは?」
と思うかもしれません。
しかし、その土台は小学生の頃から少しずつ育てていくことができます。
例えば、子どもが、
「どうしてだろう?」と疑問を持ったとします。
そこで大人がすぐに答えを教えるのではなく、
「どうしてだと思う?」
「どうやったら確かめられるかな?」
「ほかの方法もあるかな?」と問い返してみる。
子どもが自分で考える。
必要なことを調べる。
実際にやってみる。
うまくいかなければ、もう一度考える。
友達と意見が違ったら、「どうしてそう思ったの?」と聞いてみる。
こうした一つひとつの経験が、未来の学びにつながっていきます。
つまり、「未来を生きる力」は、将来になって突然身につけるものではありません。
小学生の毎日の学びの中にも、その土台をつくる機会があります。
知識を学ぶことも、もちろん大切

ここで、誤解してはいけないことがあります。
「これからは思考力が大事だから、知識を覚える勉強は必要ない」
ということではありません。
OECDのラーニング・コンパス2030では、基礎となる知識やスキル、態度、価値が、学びを進めていくうえで重要な土台として位置づけられています。基礎には、読み書きや計算だけでなく、デジタルやデータに関するリテラシー、社会性・感情面の力なども含まれています。
そもそも、何かについて考えるためには、そのことについて知っている必要があります。
環境問題について考えるなら、環境についての知識が必要です。
情報を比べるなら、情報を読み取る力が必要です。
自分の考えを伝えるなら、言葉の力も必要になります。
だからこそ、
「知識を身につけること」と「身につけた知識を使って考えること」の両方が大切です。
知識を覚えて終わりではなく、その知識を使って「自分はどう考えるのか」まで進んでいく。
これからの学びでは、その両方が求められています。
AI時代だからこそ、「自分はどう考える?」が大切になる

AIが身近になったことで、分からないことを調べたり、情報を整理したり、文章をつくったりすることが、以前より簡単になりました。
だからこそ、これからは「答えを知っていること」だけではなく、その答えをどう受け止め、どう使うのかが重要になっていくと考えられます。
「そもそも、何を知りたいのか」
「この情報は本当に正しいのか」
「ほかの考え方はないのか」
「自分はどう考えるのか」
「この情報をどう使うのか」
そして、
「自分は何をしたいのか」を考えることです。
OECDが示すラーニング・コンパス2030も、単に知識を持つことだけではなく、知識やスキル、態度、価値を組み合わせながら、自分で考え、行動し、振り返ることを重視しています。
未来を生きる力は、特別なことから始まるわけではない

ここまで見てきたOECDの考え方から分かるのは、これからの教育で大切なのは、知識やスキルを身につけることだけではないということです。
自分で問いを持つ。
考える。
人の話を聞く。
自分の考えを伝える。
やってみる。
うまくいかなければ、もう一度考える。
そうした経験を重ねながら、自分で方向を考え、周りの人と関わり、責任を持って行動していく。
その積み重ねが、これからの社会を生きていくための土台になっていきます。
そして、その力は、将来いきなり身につくものではありません。
小学生の頃から、「自分で考えてみる」「やってみる」「なぜだろうと問いを持つ」といった経験を少しずつ積み重ねていくことが大切です。
みらいミッテが大切にしている「未来の学び」

みらいミッテでは、子どもたちが一つの正解を覚えるだけではなく、自分で考え、試し、表現する経験を大切にしています。
学びの中では、「調べる・伝える・つくる・解決する」という4つの活動を通して、さまざまなテーマに向き合います。
例えば、
「どうしてだろう?」という疑問から始まり、
「もっと知りたい」
「こうしたらどうなる?」
「自分はこう思う」と考えていく。
必要なことを調べ、実際につくったり試したりして、その結果を人に伝える。
思った通りにならなければ、
「なぜうまくいかなかったのだろう?」
「次はどうしたらいいだろう?」
と、もう一度考えてみる。
そうした経験を、みらいミッテでは大切にしています。
未来は、まだ決まっていないからこそ

これから先、社会がどのように変化していくのかを、正確に予測することはできません。
だからこそ、「未来に必要な答え」を今の大人がすべて教えることにも限界があります。
変化したときに、
「どうしたらいいだろう?」と考えてみる。
誰かに答えを与えてもらうだけではなく、自分なりの問いを持ち、自分なりの方法を試し、自分なりの答えを探していく。
そんな経験が、これからの時代を生きる子どもたちの力になっていくのではないでしょうか。
みらいミッテは、子どもたちの「なぜ?」「やってみたい!」を大切にしながら、自分で考えることのおもしろさを体験できる学びの場です。
知識を覚えるだけではない。
誰かに正解を教えてもらうだけでもない。
「自分で考えてみるって、おもしろい。」
その感覚を、小学生のうちから少しずつ育てていく。
これからの社会を生きていく子どもたちに、そんな学びの時間を届けています。
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