〜テストでは測れない“学びの根っこ”を育てる〜

「見える学力」と「見えない学力」
最近、教育の世界で注目を集めているキーワードが「非認知能力(ひにんちのうりょく)」です。
「思考力」「表現力」「協働力」など、みらいミッテのレッスンでも重視しているこの力は、いわば“見えない学力”。
学校で測られるテストの点数や偏差値といった“見える学力”が木の幹や枝葉だとすれば、
非認知能力は根っこの部分にあたります。根がしっかりと張っていれば、どんな風が吹いても倒れないように、
子どもたちの「学び」も安定して伸びていくのです。
教育心理学では、この関係を「樹木モデル」として表すことがあります。地上に見える成果(点数・成績)は、
地下で育まれた“見えない力”によって支えられている——。非認知能力とは、まさにその学びの土台となる力です。

非認知能力とはなにか
「非認知能力」という言葉に対応して「認知能力」という言葉があります。
- 認知能力:知能検査や学力テストなど、共通の尺度で数値化できる能力。例)IQ、暗記力、処理速度、学力
- 非認知能力:数値で測れない、情緒や社会性に関する力。例)自制心、誠実性、自尊心、好奇心、やり抜く力、協調性、意欲、主体性など
簡単に言うと、「テストで点を取る力」が認知能力、「自分を動かす力」が非認知能力です。
たとえば、同じ課題に向き合ったときに「もう一度やってみよう」と挑戦できる子と「どうせ無理」と諦める子がいるとしたら、その違いを生んでいるのが非認知能力です。

経済学でも注目される「非認知能力」
教育分野だけでなく、経済学の研究でも非認知能力は重要視されています。
経済学者のジェームズ・ヘックマンらの研究は、IQや学歴だけでは将来の所得や成功を説明しきれないこと、
そして幼児期の介入(教育・環境)が成人後に大きな恩恵をもたらすことを示しています。
ヘックマンは、認知能力だけでなく非認知能力(社会性、自己制御、協調性など)が長期的な成功に強く関連すると指摘しています。つまり、幼児期から小学生期にかけた体験や関わりが、その後の人生に長く影響を与えるということです。
なぜ今、非認知能力が注目されているのか
非認知能力が注目される理由は、主に次の3つです。
- 生涯にわたって良い結果をもたらすから
非認知能力が高いと、学業だけでなく仕事や人間関係の満足度も高くなることがわかっています。 - 教育によって育てられる力だから
家庭や学校の関わり方、地域のプログラムなどで伸ばせることが研究で示されています。 - 変化の激しい社会を生き抜くために必要だから
AIやテクノロジーが進む時代、正解のない問いに向き合う力、主体的に試行錯誤する力が必要です。

小学生期は「見えない力」の伸び盛り
脳科学の観点では、非認知能力に深く関わる前頭前野が10〜18歳ごろに大きく発達するとされています。
小学校の時期は、その土台を作る重要なタイミングです。
幼児期の生活習慣や「学びに向かう力」が土台になり、それが後の認知能力(学力)を支えるという研究もあります。つまり、非認知能力の育成は学力の根づくりとも言えます。
非認知能力を伸ばすためには(家庭・習慣のポイント)
家庭や教育現場でできる具体的な関わり方のポイントは次の通りです。
- 行動を見て評価する:できた/できないではなく、工夫や努力の過程に注目する。
- 変化に気づく:表情や言動の小さな変化を言葉にして伝える。
- 続ける仕組みをつくる:やり始めたことを習慣化する支援をする(小さな目標設定、記録、振り返りなど)。
- 失敗を学びに変える:結果だけで評価せず、失敗から何を学んだかを一緒に考える。
こうした日々の関わりが、「やればできる」「自分は成長できる」という自己効力感につながります。
非認知能力は見えにくいので、日常の様子や表情、言葉の変化を観察することが重要です。

非認知能力を育てる習い事とは
習い事は家庭とは異なる学びの場として、非認知能力を伸ばす良い機会を提供します。タイプ別の傾向は次の通りです。
習い事のタイプ | 育つ非認知能力 | 特徴 |
---|---|---|
スポーツ系 | 協調性・粘り強さ・自己統制力 | チームプレーや練習で努力と協力を学ぶ |
音楽・演劇系 | 表現力・感受性・自己肯定感 | 舞台経験や表現を通して自信と協働を育てる |
探究・思考型 | 思考力・主体性・やり抜く力 | 答えのない問いに向き合い、考え抜く経験が得られる |
習い事を選ぶ際のポイントは「結果より過程を重視しているか」です。
上手くいかなかったときにどう乗り越えるか、仲間とどう協力するかに価値を置くプログラムは、
非認知能力を育てるのに適しています。
みらいミッテの取り組み:学びの根っこを育てる教室
みらいミッテでは、以下のような学びを通して非認知能力を総合的に伸ばすプログラムを提供しています。
- 探究型のプロジェクト学習:正解のない問いにチームで取り組む
- 仲間との対話や発表:自分の考えを整理して伝える経験を重ねる
- 自分で決める・やり抜く経験:小さな成功体験を積み重ねる
レッスンを続けた子どもたちからは「間違えるのがこわくなくなった」「自分の意見を言えるようになった」といった自分の成長を認める発言が聞こえてきます。これらはまさに“見えない学力”が育ってきた証拠です。

まとめ:これからの時代にこそ必要な「非認知能力」
AIやテクノロジーの進化で、正解が流動化する時代にあって、非認知能力は子どもたちが豊かに自立して生きるために不可欠な力です。
失敗を恐れず挑戦する勇気、仲間と協力して課題を乗り越える力、そして自分の可能性を信じる力――
それらは目には見えないけれど確かに“根”となって、子どもたちの未来を支えます。